スイス連邦工科大学( 英語:Swiss Federal Institute of Technology/ドイツ語:Eidgenössische Technische Hochschule/略称:ETH)は、1855年にスイス連邦共和国政府によって設立された。
現在ETHは、チューリヒ校、ローザンヌ校、及び4つの国立研究機関から成り立っている。
創設時の名称はEidgenössische Polytechnische Schule(「国立技術専門学校」の意)。当初は建築学科、都市工学科、機械工学科、化学科、林業学科、多目的学科(数学、自然科学、文学、社会=政治学を包括)の6つの学科より構成されていた。現在、ETHには16の学科がある。
ETHチューリヒ校は、スイス連邦チューリヒ市にある自然科学と工学を対象とした単科大学である。これまでに21名のノーベル賞受賞者を輩出している。
スイスで建築教育の大学といえば誰もが即座にスイス連邦工科大学チューリヒを思い浮かべるという、スイスを代表する建築学科であり、第一線で活躍する建築家を多く輩出している。大学の根幹をなす建築議論は、建築家でもある教授陣のスイスの建築遺産に対する深い歴史的見識に支えられている。教育は、建築に対する正しい理解と情熱を身体と感性を介して経験させること、そのため建築の歴史的背景を深く理解することが重んじられている。
ETHの学生には正規科目として12か月間の実務研修が義務付けられており、それがこの学校の特色でもあり、学生の人格形成に深く影響を及ぼしている。また、教師は皆第一線で活躍する建築家でもある。ETHの教員には、一貫して教職の傍ら事務所を自営する人物が採用されている。そのため、授業には実務経験がそのまま活かされ、学生は実態をともなった建築とリアルに接することができる。
近年では学生の国際化が進むとともに海外の建築家を多く招聘し、日本から妹島和世、千葉学、貝島桃代が招かれている。
セメスターの構成と教育内容がETH建築学科の一つの特徴である。一つのセメスターは6カ月継続し、週35時間から38時間、授業あるいは実務研修による建築教育を受けることになる。マスターを卒業するまでに9つのセメスターを終了する必要があるが、日本の大学のような「一般教養」は無く、更にはセメスターを連続して受講する必要もなく、休みを取ったり、実務経験を経て戻ることも通常に行われている。ライセンス制度が無いスイスは、ETHを卒業すること=建築家として社会で活動する、というシステムとなっている。そのような社会システムにおいて、ETHは、高いレベルで「人間」が構築してきた「建築・都市」に関連する、学問と実務の統合的な知の醸成を目指しているように思う。ピーター・メリクリは、上記のセメスタープログラムの中の最終段階に当たるNo.8もしくはNo.9のセメスターにおいて、建築デザイン分野を受け持っている。