岩波ホール 街並みの美学

設計 芦原建築設計研究所
竣工 1968年1月(昭和47年)
構造規模 鉄骨鉄筋コンクリート造  地下2階・地上11階  延べ床面積 9,110㎡
ホール概要 席数232席(現在 220席)
内装 壁/ ラワンオイル拭き、天井/ トムレックス吹付、床/ リノリュームタイル、
舞台床/ ヒノキフローリング(幅90㍉, 厚さ30㍉)プロセニアムアーチ 幅9000㍉, 高さ3700㍉

岩波書店の出版物のコンセプトである、「常に最新の学術・思想を扱いながらも、色褪せることなく長い年月読み続けられる良書」の出版という精神を受けてこのビルは計画された。企業イメージを建築表現に連動させるという考え方は今日では珍しいことではないが、当時としては斬新な考え方であった。このビルにおいては、クライアント側からの要求ではなく、芦原義信氏自身の建築思想から来たようである。流行に流されるのではなく、飽きのこない普遍性を目指したデザインを目指している。外壁には、ガラスや金属といった素材ではなく、安定感のあるしかも技術的には時代の先端をゆくコンクリートPC版のカーテンウォールが採用されているのも、この思想の反映といえる。
竣工当時の神保町は、今と同じような古書店が並んでいたが、そのほとんどが木造2階建てで、1階は書店・2階は住居という構えであった。文字どおりの神田界隈のランドマークビルとしてその後の街の発展に大きく影響を与えたといっても過言ではない。正面ファサードは、拡幅計画があった白山通りと靖国通りを意識して計画されている。その後、白山通りの拡張は現在まで完成を見ていないが、1階周りに計画された広場は、古本祭りの会場等に使われており、その後に展開する芦原義信氏の“街並みの美学”を連想させるものである。

  1:  岩波ホール観客席
2:  岩波ホールエントランス
3:  岩波ホール(岩波神保町ビル11階)平面図
4:  1966年10月11日 岩波神保町ビル 当時の建設風景
5:  岩波神保町ビル 当時