マギーズセンター(1996-2014)

Edinburgh

場所 Western General Hospital
The Stables Crewe Road
Edinburgh EH4 2XU
竣工 1996年
設計 Richard Murphy Architects

マギーズエジンバラは、開設された最初のマギーズセンターであり、マギー自身が構想に関わった唯一ものである。ウエスタン総合病院の敷地内に建てられていた石造の納屋を1996年に改修し、利用者の増加に伴い2005年にリラクゼーションルームなどが増築された。吹き抜けにより開放的なエントランスホールや増築部のリラクゼーションルームには、ところどころにニッチが点在し、造り付けのソファが設置され、小さな居場所が点在している。限られた空間を状況に応じてフレキシブルに使えるように、扉を開け放つと連続した一つの空間になり、閉めると個室として利用できるように空間が分割できる。

Glasgow (Gatehouse)

場所 Gartnavel General Hospital
1053 Great Western Road
Glasgow G12 0YN
竣工 2002年
設計 Page/Park

マギーズグラスゴーゲートハウスは、スコティッシュバロニアル形式のゲートハウスを増改築したものである。リラクゼーションルームやシッティングルームが螺旋状に小塔の周囲に配置され、隣接するケビングローブ公園に対して大開口が設けられている。小塔の下部は本に囲まれた小さな隠れ処のような空間になっており、天窓からは光が差し込む。建築家ページ・アンド・パークが「全体にわたる開放を保持しながら一連の閉じた部屋をいかにつくるか※」と述べているように、開放性と閉鎖性を併せ持つ空間が展開されている。現在は、グラスゴー事務所として使われている。

※Charls Jencks, Edwin Heathcote: The architecture of hope, Frances Lincoln Limitited
 Publishers,2011, pp.102-106

Dundee

場所 Ninewells Hospital
Tom McDonald Avenue
Dundee DD2 1NH
竣工 2003年
設計 Frank Gehry

ニューウェルズ病院にあるマギーズダンディーは、街や海を見ることの出来る丘の上に建っている。内部空間を包み込むような曲面の壁と波打つ屋根によって、家のようにも見え、塔のある教会のようにも見える。エントランスは屋根のダイナミズムと外部への見通しが感じられる開放的な空間が広がっており、本に囲われた図書エリアやキッチンエリアが奥に見える。開放的なエントランスやキッチンエリアに対して、カウンセリングルームやリラクゼーションルームの開口は小さく、静かで落ち着いた場所になっている。

Highlands

場所 Raigmore Hospital
Old Perth Road
Inverness IV2 3FL
竣工 2005年
設計 Page/Park Architects
Charles Jencks

マギーズハイランドは、建築家ページ・アンド・パークが手掛けた2つめのマギーズセンターであり、ランドスケープデザインをチャールズ・ジェンクスが担当した。各室は、メタファーとして示されている「細胞分裂cell subdivision※」を表したアーモンド型の平面に落とし込まれている。そのため、連続しながらも独立しているような内部空間が展開され、曲面の壁によって包まれるような感覚を創り出している。外観は緑色の銅板が渦巻くシンボリックな形態となっており、渦巻く山と呼応している。

※Page Park Architects:Maggie's Centre, Inverness,
 http://pagepark.co.uk/projects/date/2000-2009/project/maggies-centre-inverness, 2014.10.21

Fife

場所 Victoria Hospital
Hayfield Road
Kirkcaldy KY2 5AH
竣工 2006年
設計 Zaha Hadid Architects

マギーズファイフは、窪地とビクトリア病院の駐車場に隣接して立地している。駐車場から徐々に立ち上がり折れ曲がった外壁は、利用者を喧噪から離し内部空間へ導く。内部空間は窪地の木々に向かって開口が開かれており、外壁とは対比的に白く仕上げられている。さらに三角に開けられたトップライトによって、明るく表情のある内部空間になっている。空間構成は、キッチンエリアを中心にリラクゼーションルームなどが隣接した回遊性のある空間となっている。ザハハディドはマギーズファイフについて、病院で治療を受けた後に「再び家庭的なスケールの環境に戻るためのバッファー※」だと述べており、病院と家をつなぐ空間がイメージされたことが分かる。

※Charls Jencks, Edwin Heathcote: The architecture of hope, Frances Lincoln Limitited
 Publishers,2011, pp.124-112

West London

場所 Charing Cross Hospital
Fulham Palace Road
London W6 8RF
竣工 2008年
設計 Rogers Stirk Harbour+Partners

マギーズロンドンは、高層のチャーリングクロス病院の敷地内に立地し交通量の多い道路に隣接している。そのため、オレンジ色の高い外壁と浮遊するような屋根によって囲い込まれており、周辺環境から距離を置くことが出来る「避難所retreat」として設計された※。中庭が複数設けられ、キッチンエリアやカウンセリングルームが中庭に対して解放されている。また、「オープンなレイアウトだが異なる段階のプライベートスペースが一つになっている※」ことがコンセプトとして述べられ、間仕切り棚によって空間が分けられかつ統合されている。

※Rogers Stirk Harbour + Partners LLP:Maggie’s Centre,
 http://www.rsh-p.com/work/buildings/maggie_s_centre/concept#highlight1, 2014.10.21

Cheltenham

場所 The Lodge
College Baths Rd
Cheltenham GL53 7QB
竣工 2010年
設計 Richard MacCormac

マギーズチェルトナムは、ビクトリアンロッジの増築によって作られた。増築部分にはキッチンエリアやリラクゼーションルームが設けられ、これらの室は炉端inglenookによって仕切られている。キッチンテーブルは、アルコーブや飾り棚によって囲われており、クリアストリーclerestoriesやトップライトから自然光が差し込まれている。また、キッチンエリアに接続するポッドpodsと呼ばれる円筒状の小さい空間からは川や庭が眺められるようになっておりカウンセリングルームとしての機能を果たす。建築家マックコーマックは「内部空間は細分割され囲まれ※」と述べており、小さい隠れ処のような空間によって空間が構成されていた。

※MJP Architects
 http://www.mjparchitects.co.uk/projects/maggies-cancer-care-centre/

Glasgow (Gartnavel)

場所 Gartnavel General Hospital
1053 Great Western Road
Glasgow G12 0YN
竣工 2011年
設計 OMA(Rem Koolhaas)

マギーズグラスゴーガートナベルは、グラスゴーの街を眺めることが出来るガートナベル病院の林の中に立地している。建物は中庭を囲むようにリング状の形態をしており、L字型の部屋が相互に連結しながら空間が構成されている。OMAは「部屋はつながっているが、それぞれの機能を持ちながら分けられている※」と述べており、カウンセリングルームも利用していない時には扉が開け放たれて、誰でも立ち寄れるようになっている。また各室は中庭や周囲の景観のどちらかに面しており、多様な自然環境を感じることが出来る。造園設計は、マギーの娘リリー・ジェンクス。

※MJP Architects:Maggie’s Cancer Care Centre Cheltenham,
 http://www.mjparchitects.co.uk/projects/maggies-cancer-care-centre/, 2014.10.21

Nottingham

場所 City Hospital Campus Gate 3
Hucknall Road
Nottingham NG5 1PH
竣工 2011年
設計 Piers Gough

マギーズノッティンガムは、ノッティンガム市病院の木々の生えた傾斜地に見え隠れするように建っている。空間構成について、CZWGは「要求された沢山の部屋を回遊することが出来る無駄のない四角いプラン※」だと述べている。 1階は図書エリア、居間、キッチンエリアなどのパブリックな空間が位置しており、少しずつ床面にレベル差を持たせながら、これらの空間が連続している。キッチンエリアからはデッキが木々に向かって張り出し、内部空間の延長として機能している。インテリアは、ノッティンガムを出身のデザイナーのポール・スミスの寄付による。

※CZWG Architects LLP:MAGGIE'S CENTRE NOTTINGHAM,
 http://www.czwg.com/works/maggies-centre, 2014.10.21

Swansea

場所 Singleton Hospital
Sketty Lane
SA2 8QL
竣工 2011年
設計 黒川紀章

マギーズサウスウェールズのデザインコンセプトについて黒川氏は「地中から腕を振り回しながら現れた宇宙の渦を表している※」と述べている。エントランスとキッチンエリアは、渦の中心部である円筒部の中心に位置しており、最も天井が高く開放的な空間である。さらに中心から延びる渦の先端にはリラクゼーションルームなどの室が位置しており、リズミカルに開けられた壁面の開口と天井に開けられたトップライトから差し込む光によって明るく保たれている。

※黒川紀章建築事務所:マギーズセンター・サウスウェストウェールズ(イギリス),
 http://www.kisho.co.jp/page.php/479, 2014.10.21

Hong Kong

場所 Tuen Mun Hospital
Tsing Chung Koon Road
Tuen Mun, N.T.
Hong Kong
竣工 2013年
設計 Frank Gehry

マギーズ香港は、ツェンマン病院腫瘍科の横に位置する。設計はフランク・ゲリー、造園設計はマギーの一人娘、リリー・ジェンキンス。白石を敷いた大きな人工池に面した開放的なガラス張りの側面は、全体のボリュームに変化をもたせるようにエントランス部分の切妻とグループワーク用の部屋の入母屋が連なる。その手前の執務室は四角いコンクリート造りで、池越しに見る外観が香港の街並みのようだ。夕暮れ時は、池に明るい家並みが水面に写り、香港らしい。玄関を入ると、天井高のある三角形の屋根の下に、居間のような室礼と広いオープンキッチンが繋がる。先奥と横に配置された小部屋は浅い水面の庭で囲まれ、水色のインテリアも手伝って水上にいるような感覚を促す。父親の仕事の関係から幼い頃からマギー自身も香港、中国に馴染みが深く、これが初めての海外プロジェクトになった。

Newcastle

場所 Freeman Hospital
Melville Grove
Newcastle upon Tyne
NE7 7NU
竣工 2013年
設計 Ted cullinan

建物は野草の花が咲き乱れる小山の上に茶色の斜めの屋根が見えるだけだ。プランは90度に振られたウイングをもち、片方はカウンセリングやグループワーク用の部屋が並び、もう片方はオープンキッチンが中心になっている。ウイングが重なる部分が、この建物の中心で、吹き抜けのある明るい居間になっている。その壁面沿いの本棚仕立ての階段を上がると二つウイングの屋上庭園に繋がる。インテリアはもっぱら白色系の木材を多用しているので、目線の先にある野草の咲く小山のような外壁と茶色のレンガ敷きの中庭とも一体感をなし、自然の中にいるような安らぎを与える。部屋の大きなジュータンや個室に置かれた小さなソファまでも、センスの良い行き届いた配慮がある。

Aberdeen

場所 Aberdeen Royal Infirmary
Elizabeth Montgomerie Building
Westburn Road, Foresterhill
Aberdeen AB25 2UZ
竣工 2013年
設計 Snøhetta

大きな白い石が横たわったオブジェのような外観。設計者は、「この形は暖かさと安心感と保護される感覚を現わす。大きな穴のような部分から入るアプローチは、歓迎されているような感覚を養う」という。天井高のある丸く大きい白い内部空間は、不思議な静けさと落ち着きを促す。アプローチに面したガラス面をもつオープンキッチンから、庭に面した居間へと続く、長い曲面の壁をもつ空間は、人々に自ずとプライバシーを尊重させるような静けさを保たせる。丸く大きな白い空間の居間は、吹き抜けのような天井高にも関わらず、包まれたような気分にさせる。この空間の中心にある木質系の2階部分が執務室で、左右の吹き抜けによって下の様子が常にわかる。

Merseyside at clatterbridge

場所 The Clatterbridge Cancer Centre
Clatterbridge Road
Bebington Wirral
CH63 4JY
竣工 2014年
設計 Carmody Groarke

クラッターブリッジがんセンターと連動して進められる、仮設のマギーズセンターである。カーモディ・グロークは、2012年のロンドンオリンピックのための作品『ロンドンドレッサー』に使ったファイバーガラスパネルをここでも使用し、狭隘な土地からの制限を芸術的に解決した。道に接した狭い敷地を、このパネルで囲み、側面からは何も見えない。あるのはただの乳白色の存在だけ。その中を幾つかに分断して、マギーズが求める用途をうまく解決している。隣接する広大な麦畑を借景にした内部空間は開放感をもたらし、外壁のファイバーガラスパネルでできた塀の中の外部空間はウッドデッキが敷かれ、完全な外と内の安全な中間領域的になっている。

Lanarkshire

場所 The Elizabeth Montgomerie
Building Monklands Hospital,
Monkscourt Avenue,
Airdrie North Lanarkshire
ML6 0JS
竣工 2014年
設計 Reiach & hall

病院郡が並ぶ敷地の端の既存の高木の下に低く建っている。建物はこの地方独特の白色系の特製レンガに囲まれたコートハウス。短冊型の敷地に、レンガ敷きの前庭、内部空間に点在する光庭、低草が彩りよくデザインされた後庭へと庭々が続く。光庭に面したオープンキッチンを中心に、エントランス側は執務室、ライブラリー、後側は庭を眺める居間とその左右の大小の部屋。光と木とレンガでなるインテリアは、暖かさと静けさを感じさせる。訪問者は、オープンキッチンの木製のダイニングテーブルに先ず座り、お茶を飲み、各用途の部屋に向かう。玄関からも見通せる後庭の空が清々しい。後庭は段差があり、居間から見下ろす位置にある。

Oxford

場所 The Patricia
Thompson Building
Churchill Hospital
Old Road Oxford OX3 7LE
竣工 2014年
設計 Wilkinson Eyre

「アートと科学に橋をかける」がモットーのウィルキンソンが設計した。建物の後ろには大きく成長した高木群が林立している。病院の玄関のすぐ前の敷地は、道路から下っているため、足をつけて、人工地盤のように、三つのウイングのある基地をつくった。アプローチの橋を渡ると、三つのウイングの交点部分に玄関があり、そのすぐ横にオープンキッチンがある。右側のウイングは執務室、左側は大きなガラス張りの居間、奥のウイングには大小の部屋が並んでいる。天井は外側に向かって高い。外壁は大部分がガラス張りだが、ガラス面に斜めに交差するように配された木製パネルが室内に微妙な影をつくる。周辺から建物を見ると、見る位置をかえるたびに表情を変える。