レストラン・サヴォイ
The restaurant of Savoy,Helsinki
1937

会場写真/レストラン・サヴォイの再現コーナー

レストラン・サヴォイはヘルシンキの一等地、エスプラナディ通り沿いの建物の最上部7,8階に位置する。インテリアは主にアイノ・アールトが担当し、家具は全てアルヴァと共同でデザインしたアルテック製のモノが使われている。

フィンランドでは自然の光はことのほか大切にされ、この最大の恵みから最も離れた奥の壁際のゾーンは、残された資料からアイノが特にデザインに注力した痕跡が読み取れる。白く塗られた煉瓦の壁、欄間開口を目立たせないように付けられた木製の斜材とこれに絡まる緑、白いクロスがかけられたテーブル上部にはアールトデザインのペンダント照明、ゴールデンベルが下がり、濃紺のベンチシートの端部には丸い穴が穿たれた木製の袖壁が置かれるなど、アールトデザインのアイコンが満ち溢れている。また、このレストランのためにデザインされたガラス器であるサヴォイ・ベースはその形をサービステーブルにも展開しており、現在でもその姿を見ることができる。このガラス器はMoMAのコレクションになっている。

開業時には屋外のテラスであったところの一部が、現在ガラスの屋根と壁で囲われ、食事をすることができるテラス席に改修されているが、太陽の光に敏感な国にあっては、自然の成り行きだと思われる。屋上は今でも一部が外部として残り、ハーヴが植えられ、食材として供されている。

顧客の一人であったフィンランドの大統領、カール・グスタフ・エミール・マンネルハイム(1867-1951)は特定の席を持つほどこのレストランに足を運んだというエピソードがあるように、サヴォイは高級レストランとして栄え、今日でもアールトデザインに包まれたレストランとして名声を博している。

左/アイノが描いたドローイング
中/竣工当時のレストラン・サヴォイ
右/Artek20周年記念イベント1955 右端にアルヴァ・アールト