アイノ・アールトは熱心な写真家でもあった。学生時代に写真に興味を持ち始めたアイノは、フィンランドで「ニュースクール」とよばれた写真のモダニスト達の先導者であるエイノ・マネキンが1931年に雑誌『ヴァロクヴァウス』誌の中で提唱していた「光とスピリット」という基本要素を実践した写真を多く残した。
「ニュースクール」はモホリ=ナギのモダニズム運動の影響を大きく受けていた。アイノとアルヴァはCIAM(モダニスト建築家の国際組織)の仕事に携わりバウハウスで、教鞭をとっていたハンガリー出身のラースロ・モホリ=ナギとの交友関係を得た。モホリ=ナギが友人とフィンランドを訪れた時は一緒に旅をし、アールト事務所がデザインした建築の写真も撮っている。
モホリ=ナギは写真だけでなく、芸術のあらゆる分野に積極的に取り組んでいた。アイノはモホリ=ナギのカメラ操作を身近に見ることにより触発を受け「ニュースクール」の大胆な技法で光と影のコントラスト、パースペクティブの効いたアングルなどを試みた。