桐谷 詩絵音
「五輪橋」と刻まれた橋、その向こうには「この国は何かがおかしいゾ」という落書き、そして、見るからに痛そうな有刺鉄線。作者の問題意識は明確なようです。全体を見ても、街を造形的に捉えた構図が気持ちいい。都市という空間の中に人間性をみたいと思っているのか。若いみずみずしい感性を写真に落とし込めている。(菅沼)
池田 博子
タイトル(「不安な東京の光の中で」)通り、不安な光に満ちている写真だ。あまいピントでぼんやりとしたこの街に、世界中のアスリートが集結して、オリンピックが開かれるのであろうか。運河周辺のマンションやビル群には、人々の息遣いも感じられない。しかし、川は人々の営みに関係なくゆったりと流れ、鳥も自由に飛び回っている。自分の意図を反映させた絵作りができている。(菅沼)
薄羽 美江
ピントのボケた写真。これは何? 他の写真を見てみると、東京を俯瞰した写真に始まり、東京タワーや高層ビル、コンクリートで固められた建築物が並ぶ。そこに灯台の写真が現れ、続いて地層の断面や溶岩に覆われた大地を見せられ、この写真が続く。多分、火山の模型だろう。こうした長い長い時間の上に築かれた東京。これからも地球の大きな歴史からは逃れられない。25枚の写真から壮大な物語を感じる。(菅沼)