ご挨拶
公益財団法人 ギャラリーエークワッド 館長 白川 裕信

ギャラリーエークワッドは開設16年目に入りました。「オリガミ・アーキテクチャー 一枚の紙から世界の近現代建築を折る」は、113回目の企画展です。昨年はコロナ禍の影響で一時閉館を余儀なくされました。会場に来て、見て、体感していただくことを念頭に展示計画をして参りましたので、来館者の減少はとても残念です。一日も早く平穏な日常が戻ることを希っております。
さて、「折り紙建築」は、建築家で東京工業大学名誉教授の故・茶谷正洋さんが1981年に考案し、翌年に銀座松屋のデザインギャラリーで作品が紹介されました。建築をテーマにした作品づくりからはじまり、対象は広範囲にわたり、1983年以降数多くの本も出版され、同時にその活動、影響は世界規模になっていきます。本展ではその足跡と、そこから広がっていく折り紙建築の世界を紹介します。
建築には作品批評という領域があります。良い批評が言葉少なくその本質を突いているように、茶谷さんの作品の特徴は、ある種の抽象化とも言える絶妙な省略により、対象とする建築の特徴を見事に浮かび上がらせていることです。この奥義は、今日ご息女の茶谷亜矢さん、そして折り紙建築家に引き継がれています。
二つ折りの紙を90度、或いは180度に開くと完成形になることが基本で(0度、360度に開く例もあるようです)、いずれも必ず二つ折りに畳めて、畳んだ時に飛び出さないことが原則とのことです。二次元から三次元へ、アナログ的変化の妙は一興です。切り込まれた平面から立体の姿を想像することも、逆に、立体を見て平面の仕掛けを思い描くこともなかなか適いません。手の込んだ作品は、まさに「カミわざ」、一級の工芸品です。オンラインワークショップでその面白さを実感してみて下さい。
本展では、第16回ドコモモ国際会議のご協力により、モダンムーブメントに位置づけられる建築作品を紹介します。80点の折り紙建築と合わせて、年表により日本だけでなく、世界各地の建築を同じ時間軸で俯瞰する貴重な機会となっています。
日本では近現代建築の保存修復に関して世論の共感を得ることは容易ではありません。解体された名作も数多くあります。本展で採り上げた建築という社会資産がどのような歴史的背景を持っていたのか、そしてその行く末は?専門家だけでなく、大人から子どもまで、多くの人に関心をもっていただきたいと思っています。
会場には制作工程の紹介、作品に直に触れることができるハンズオンのコーナーもあります。この機会に、自分で作ってみたり、近現代建築について考えたり、新しいことにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
最後になりますが、ご協力いただきました皆様、関係機関に対しまして、深謝申し上げます。