眼光折り紙に徹す:折り紙建築展をどのように見たらいいか?
城西国際大学特任教授、東京大学名誉教授 村松 伸

一枚の紙から世界の近現代建築を折る。このように副題に付された今回のオリガミ・アーキテクチャー展には、この展覧会に関心をもったあなたにいくつかの関与の仕方が仕掛けられています。
一、見ること:日本の伝統の折り紙を発展させて生まれた折り紙建築は、見るあなたをうならせます。一枚の紙から作られ、折りたたまれてしまうその妙技、美技。それは、世界一流選手のスポーツを見ることと似ています。走る、泳ぐ、跳ぶ、舞う、闘う、さまざまな妙技が人間の身体の可能性を見せてくれるのと同様、この折り紙建築も折り紙建築家たちの「カミわざ」を披露してくれています。
二、手を動かすこと:妙技に到達できなくても、わたしたちもその「カミわざ」に参加してみることが大切です。できた達成感だけでなく、できなかったことによって折り紙建築をさらに深く理解することができるはずです。
ところで、私は今回のこの展覧会に建築の歴史を学ぶ専門家として参加しています。副題に、「世界の近現代建築」と入れ込んだのは私です。その立場から付け加えたいもうひとつの関与の仕方は、考えること、です。
この展覧会は、2年おきに世界各地で開催されるDOCOMOMO(ドコモモ)という国際組織の第16回目の東京国際会議に合わせて企画されました。
DOCOMOMOというのは、おおよそ第一次世界大戦から1970年代のオイルショックくらいまでに世界各地で建てられた近現代建築(Modern Movement)を記録(Documentation)し、保全(Conservation)しようとする活動組織です。1988年、オランダで創設されたこの組織は、現在世界各地に70以上の支部をもち、近現代建築の世界遺産への申請をサポートしています。日本には、2000年その支部のドコモモジャパンが作られました。
この組織は、第一次世界大戦前後からの建築物が、次々に解体されたことへの脅威から発足したのですが、解体の大きな理由は一般のひとびとの建築への無関心でした。この展覧会にやってきたみなさんに提示する三つ目の関与の仕方「考える」とは、折り紙建築を通して、なぜ、これらの近現代建築が建てられたのか、世の中にどんな正負の「貢献」をしたのか、どうして解体され、あるいは解体の危機に瀕しているのか、を自分の頭で考えてみることです。
近現代建築は、進歩、発展、健康、教育、生産、繁栄、平和などを促進してきましたが、一方で、格差、人種差別、戦争、女性・中性への抑圧、帝国主義、都市化、地球環境の悪化などを促進してきてもいます。折り紙建築を通じて、私たちは近現代建築と近現代世界のかかわりを理解すること、これが「考える」ことです。言い換えれば、それは、「眼光紙背に徹す」ならず、「眼光折り紙に徹す」となる。折り紙建築の向こうに、世界の未来を構想してください。